協力するのは、ニューヨーク州立大学S校の心理学者であり、やはり長いあいだ恋愛を研究テーマにしているA・Aだ。
来る日も来る日も、FとAはのぼせたティーンエイジャーを脳スキャン装置に固定し、ボーイフレンドやガールフレンドの写真を見せて、そのときの脳の活動を調べた。
現在のスキャン技術では、被験者の脳を行きかう化学物質まで追跡することはできない。
そこでFたちは、そうした物質に反応する領域にひたすら注目した。
この研究はまだ終了していないが、恋する脳が活発になる領域は決まっていると思われる。
とくに気になるのは、脳の報酬回路と呼ばれるところだ。
ここはポーカーに勝ったり、ケーキを食べたり、コカインを鼻から吸いこんだときに元気になるが、そのきっかけはドーパミンが作っている。
Aによると、恋愛についてわかっていないことのひとつに、恋愛は情動なのか、それとも動機なのかという問題がある。
ずいぶん専門的で理屈っぽい話に聞こえるが、実はけっこう根本的な疑問だ。
情動にはたとえば何があるかと問われたら、ほとんどの人は恋愛をいちばんにあげるだろう。
だが恋愛は、ほかの情動とは性質を異にしている。
たとえば怒りとか悲しみには顔の表情がともなうのは傍から見てすぐわかる。
しかし恋愛には、特徴的な表情がない。
それに恋愛には、怒りとか悲しみ、場合によっては罪悪感など、ほかの情動も含まれることがある。
だからドーパミンで刺激される報酬回路が、恋をすると活発になるという事実は貴重な手がかりだ、とAは言う。
つまり恋愛は情動ではなく、動機かもしれないのである。
何かに魅力を感じたり、報酬を得たりするときにドーパミンがかかわっていることは、すでに知られている。
S大学のB・Aたちは、男子学生を説得してある実験に協力してもらっている。
MRI装置に入った状態で、ポルノ映画を見せるのである。
同時に脳内の活動も記録して、波の打ちよせる砂浜とか野球の試合など、無難な映像を見ているときと比較する。
この実験から、男性が性的に反応するとき、脳では尾状核と被殻をはじめ、興味ぶかい領域が活発になっていることがわかった。
尾状核と被殻は報酬回路の重要な構成要素であり、ドーパミン受容体がたくさん存在している。
もっと気持ちよくなりたいという衝動が渦巻いているところだ。
以上のような研究結果は、ふつうのティーンエイジャーにとってどんな意味があるのだろう?彼らはリスクにひかれる。
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